<ビーコンの基本特性と問題点>


埋没者の発見・雪崩ビーコンの操作

 まず、市販されているビーコンの基本特性を整理しておこう。

1)457kHzの周波数を使用した発信および受信機。
2)概ね発信300時間、AB1500は1500時間。
3)電波の到達距離は、概ね50mから100m位。
 しかし、山岳での寒冷地ではこれの2分の1から3分の1に低下する。
4)現在のアナログ式ビーコンはいずれも発光ダイオウドがつき、電波誘導法が定着している。
5)信号電波の間隔は、概ね1秒である。
 (実は、0.8〜1.2sと差があり、この信号間隔の差が、デジタル式ビーコンとの互換性に問題が生じた)

◆現実に起きる問題点のひとつ
 ビーコンの訓練を行なうとき、機種により受信感度(上記(3)に関連)に違いがあるため、AB1500が他機種 (F1−フォーカス、SOSF1−ND)より、最初の受信・感度を捕えるのに遅れることが分かっている。 そのため、そこに止まると「見つからない、これは故障している」と判断する生徒がでることがある。
 世界でもっとも普及した機種は、オルトボックスのビーコンである。 各メーカーはいづれもこれをモデルとして、改善工夫をした。 それぞれに機種の特徴があり、後はその人の好みや特定の機種を勧めた人に影響される。 講習用に単一の機種を取り揃えないかぎり、各自の持っているビーコンで練習をすることになるため、 それぞれの長所短所を理解させた上で、練習を進めることになる。講師はここも理解しておかなくてはならない。

◆問題点の二つ目
 講師の間で長く問題となっていたのは、電波誘導法とクロス(直角)法のいづれで教えるのかという問題である。 最初にクロス法を教えて、次に電波誘導法を教えたほうが良いとする考え方、 電波誘導法を教えて、ピンポイントの時だけクロス法に切り替えるという考え方、 最初から電波誘導法で通すという考え方の三通りである。
 オルトボックスのF1のタイプが、国内でも普及した。 これは、信号の強さを音の強弱で判定するため、図1のように、最初の受信音(弱)から徐々に強くなり、 さらに移動すると信号音はまた弱くなり、やがて信号音を取れなくなる。 この中間点を割り出し、ここから直角に受信音の強い方向に進行する。 この繰り返しで埋没地点を絞って行く方法である。
 もっとも信号音の強い場所を割り出すためには、左右に弱い場所の確認が必要である。 この方法が確立したことで、雪崩ビーコンは大きく普及した。  F1・フォーカスが出てからは、この操作を誘導法に変えている。 従って、誘導法の弱点をカバーする方策を明確にすることで問題は解決する。

 実は、このクロス法は電波誘導法に比べると、習熟するには耳がよく、 勘が良い者には有利で、一面職人芸的な深みがあった。 電波誘導法は、「強い電波に乗って行きなさい」と教えればよく、練習すれば短時間に5分の壁を破って行く生徒もいる。
 雪に埋まったビーコンの位置を探すには、電波の特性だけでなく、埋没している深さを常に念頭に入れないと、 最後まで立ったままで探し、受信感度を下げると、ダイオウドが点滅しないことがある。 つまり信号を見失い、そこで再び感度を上ると、基本的には一方向ないしは二方向での強弱があるが、 どこへ向けても信号を感知しているような錯覚におちいる。 信号を見失い、感度を上げると方位を特定できないため、ピンポイントの割り出しが難しくなる。 実は、この解決は難しくない。図2に示すとおり、ピンポイントに入ったら、雪面に膝をついて、 ビーコンを雪面に触れるようは這わせることである。 そしてもうひとつは、これがクロス法のやり方と似ているので、誘導法とクロス法の組合せとして、教えてきた理由である。 狭い範囲での、腕の延ばせる範囲を探ることで、クロス法のように信号が取れなくなる位置まで動かさない。 これも腕をのばして、直角に交差させるが、体側に添って信号を感知したら、次は体の前で横に右、左と移動させ、 ここでももっとも点滅の数の多いところに目印を付ける。 ピンポイントはこの二つのもっとも接近した位置か、交錯する位置である。

※ピンポイント検索(図3)
検索範囲が狭まりピンポイントを確定する最終段階になったら、 最小レンジになったビーコンを雪面に近づけ、最も発信音の大きい地点を確認し、 そこからクロス法の要領で90度方向を帰る事を繰り返し、 最終的に埋没者の位置を特定する。


◆ゾンデと併用、そして掘る
 ビーコンでの割り出しはここまてで良い。後はシャベルで掘る方が発見が早い。 今はビーコンとゾンデを併用して、ピンポイントに入る段階から、ゾンデの感触を取ることで、 発見までの時間を節約することができる。ゾンデがなければストックなどを代用する。

◆ビーコン操作の基礎練習
 発光ダイオウドによる電波の強弱を表示する機能は、ビーコンの操作をクロス法から電波誘導法に変えた。 このほうが合理的で優れている。 ここで断りを入れておくが、クロス法で慣れている者は、誘導法に切り替えることにそれほど問題としない。 ダイオウドの点滅より、信号音の強弱は微妙でこれを聞き分けることのできる人は、クロス法に強い愛着を持っている。 迷いも少ないためさらにこの方法から離れがたい。
 先入観を持たない生徒にビーコンの練習をさせるときは、私は迷うまで余計なことを教えないことにしている。 慣れることで習熟するものに関して、頭の中を理屈で一杯にしても、 混乱の原因なるほうが圧倒的に多いのを経験しているからである。

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