#036
雪崩の種類を考える(1)
最も一般的な形態は
「面発生表層雪崩」である。


雪崩について、正しい知識を持つことは、
雪崩の発生を事前に察知し、雪面を刺激しないよう、
そこを避行できるようになるための重要なプロセスである。

 雪崩の分類と言いますと、難しく感じるかもしれませんが、“発生の形” “雪の乾湿”“すべり面の位置”という3つの要素が組合わさったものなのです。 そして、それぞれの特徴を持つ雪崩に分類されます。

1:雪崩発生の形        →→→→→ a.点発生 b.面発生
2:雪崩層(始動積雪)の乾燥    →→→ a.乾雪  b.湿雪
3:雪崩層(始動積雪)のすべり面の位置 → a.表層  b.全層

 点発生と面発生は、その名の通り、“点”を起点と発生するか、 広がりをもった面で発生するかの違いです。 点発生は、ルンゼなどで多く発生し、多量の降雪の最中にも起こります。 それ単体では規模の大きなものにになることは少ないのですが、 複数の沢が合流するようなところでは注意が必要です。 そして、面発生の雪崩こそが、多くの登山者やスキーヤーを危険にさらすタイプです。 実際、雪崩事故のほとんどは面発生表層雪崩なのです。 ですから、実用的な雪崩の学習は、ここから始まり、他の雪崩との違いを理解し、 またここに戻ってくると言う形を取ります。
 乾雪と湿雪の区別に関しては、水の含有率が決め手となります。 乾雪とは水を含まず、雪玉を作ろうとしてもできない雪、 湿雪は水の含有率でいくつかに分類することができます。 軽く握ると雪玉になる“湿っている雪”、ルーペで覗くと水が見える“濡れた雪”、 握ると水がしみ出す“非常に濡れた雪”、そして、“スラッシュ(水べた雪)” と呼ばれる水に満たされたような雪です。
 日本雪氷学会では、1996年10月に従来の雪崩分類の見直し作業を行いました。 新たに加えられたのは、点発生乾雪全層雪崩と点発生湿雪全層雪崩です。 今までは、この2種類は理論上の雪崩形態で、実際に見られることは稀だという理由から外されていました。 しかし、観測事例があるということや、 その種類として理論上排除するのは正しくないのではという指摘から追加されました。 これにともなって、積雪の種類も国際的に通用するように見直しが行われました。

雪崩の分類(日本雪氷学会1997)
雪崩分類の要素区分名定 義
雪崩発生の形点発生一点からくさび状に動き出す。一般的に小規模。
面発生かなり広い面積にわたって一斉に動き出す。一般的に大規模。
雪崩層の乾湿
(始動積雪)
乾雪発生域の雪崩層(始動積雪)が水気を含まない。
湿雪発生域の雪崩層(始動積雪)が水気を含む。
雪崩層の
すべり面の位置
表層滑り面が積雪内部。
全層滑り面が地面。

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