#028
「雪とは何か」
この問いに対して、
正確に回答出来るだろうか。
雪崩について学習しようとしたとき、
雪について定義づけや常用される言葉について正しい認識を持つ事が大切。
雪に関する言葉の誤解や誤用が誤った知識を植え付ける元になるからだ。これまでの十数年にわたる私の登山者に対する雪崩教育の経験から言いますと、 雪と雪崩に関する基礎知識がまちまちであること、 正確な理解をしていないため途中で混乱を起こすこと、 既存の誤った理解を前提にしているため学習に障害を生ずること、などが分かってきました。 これは登山者だけでなく、スノーボーダーやスキーヤーにも共通しています。 まず最初に雪崩の学習で常用する言葉の意味を正確に理解することが大切です。
まず、「雪とは何ですか」と聞かれたら、皆さんはどのように答えるでしょうか。 私たちもこうした質問は、すでに分かっているという前提で考えていることが多いので、 すぐには答えられないことがあります。 雪、そのものを定義すると、専門用語が出てきます。 そして、その用語を説明するために、さらに説明を加えますので、 いきおい話は長くなってしまいがちです。 ですから今は、必要な視点からのみ見ていきます。
「空中から降ってくるものを雪」と考える人。
「地面に積もったものを雪」と考える人。
「雪と霜は違う」と考える人。
「雪とあられは同じもの」と考える人。
ここまででも色々と出て、説明の内容が違ってきます。 普通、雪と言いますと、「積もった雪」を考える人が多いようです。 しかし、専門用語では、これらは区別されます。 空から降ってくる場合は「降雪」と呼びます。 地面に積もった場合は「積雪」と呼びます。 そして「雪」と「霜」は明確に区別されます。 さらに、「積雪」は雪粒子と空気の混合物で通気性があるのに対して、 「氷」は通気性のないものとして区別されます。 ここで出てきた「降雪」「積雪」「霜」「氷」は、 雪崩の学習体験の中で何度も使われますので、最初に正確に覚えておかないといけません。 皆さんが目にする、あるいは耳にする雪質には、どのようなものがあるでしょう。 「新雪」「ざらめ雪」「粉雪」「ぼたん雪」など。 地方の呼び名を入れると実にたくさんの、しかも叙情的で味わいの深いものもあります。 しかし、雪の科学では叙情性は失われ、粒子形状を中心にした定義がされています。