#001
本書の目的。
新雪を目指すために必要な最低限のこと。


いわゆるパウダーと言えば、スキーヤー、スノーボーダーの究極の憧れである。
しかし、ここに踏み入る前に理解しなければいけないことがある。
それらは無事に帰ってくるために必要な事だ。

 本書は、ゲレンデを離れ雪山で新雪を自在に滑ってみたい、 と考えているスノーボーダーやスキーヤーの安全を願って編纂されました。 ここに網羅された内容は基礎的なものばかりですが、すでに雪山体験をしている人、 つまり全くのビギナーではなく、初歩的なことについては、ある程度理解している人を対象としました。 滑走の技量は、上級者コースを楽しみながら滑ることのできるレベルを想定しています。 また、スキー場やある場所を拠点とし、日が暮れる前に再び出発地に戻る、 ワンデーの滑走スタイルを前提としています。 その行動時間は最低でも5〜6時間。その間、雪山で活動できるだけの体力がなければならないことも重要です。 その行動の間を通して安全を確保する、あるいは安全性を高めるためには“知識と技術”、 そして“経験”が必要なのです。
 山用具の是非につきましては、この1年間、実際に見て確かめてきたことについて、 私の考えを述べてあります。 スキーとスノーボードに関しては、それぞれの専門家から補足をしてもらい原稿としました。 また、この本を手にした方は、少なからず“雪と雪崩”のことについて関心を持ち、 万一、事故に遭ったらどうしたらいいのか、という疑問を持っている人だと思います。 ですから、そうした意識や要求に応えるため、極力実用的な内容になるように心がけました。 実際、雪と雪崩に関して初めて学ぶ人は、俗説と誤解が入り混ざり、 本を読んでも観察体験や実際の行動が少ないため、混乱しているケースが多いからです。 そのため雪と雪崩に関しては学術的な表現を避け、分かりやすくなるようにしました。 ある面においては割り切った言い回しをしている部分もありますので、 これで全ての要素が網羅されている訳ではないことを予めお断りしておきます。
 最近、バックカントリーでのスノーボードやスキーを楽しむ人たちが増えています。 天気と雪の様子をよく見ながら、ワンデーのスキーやスノーボードの経験を積んでいくことによって、 ツアータイプの楽しみ方にステップアップしていくことも可能でしょう。 新雪を目指す皆さんの願いに応えることができれば、なによりと思っています。

101 Hints of Back Country
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