<北海道登山者学校・雪崩講習会>


北海道登山者雪崩研究会HPにて、昨年の講習会の様子が紹介されています。

日時:99年2月20〜21日(土日)
場所:北海道・中山峠

記事:札幌在住の田中太郎氏(99/2/25)

2/20(土)、21(日)に中山峠で行なわれた北海道登山者学校
雪崩講習会(中級クラス)に参加してきましたので報告します。
#すごく長くなってしまいました。

#1998/10/4(日)机上学習会(雪崩全般)、1998/11/19(木)机上学習会
#(低体温症)、1/10(日)補修実習(中級クラス対象)に続く4回めで、
#今回の実習でこの講習会は終了です。

感想とか気が付いたことがあったらフォローお願いします
  > 基本クラスに参加した方

#セルフレスキューの捜索訓練をもっとやってみたいのですが、
#「今日はパウダーないからとっと上がる」というときに
#訓練に付き合ってもいいよという人はいませんか? > 特に普段
#ニセコで一緒に滑べっている人達

【今回の参加者】
大半は、どこかの山岳会に所属している山スキーヤーでした。
山岳会に入ってない人の所属欄はバックカントリーになってました^^;
バックカントリーは私以外はボードで、私はテレマークで参加しました
(登りがあったので)。
#私が普段やっているツボ足で登るアルペンスキーヤーというのは、
#想定していないようでした。

【班構成】
基本クラス 4班22名 うち1班6名は全員ボード、残りは全員山スキー
中級クラス 3班15名 ボード3名、テレマーク1名、残り山スキー
講師養成クラス 11名 全員山スキー

【講習の内容(中級クラス)】
2/20午前 
ゲレンデ脇の斜面を登りながら、弱層ハンドテスト、雪の結晶観察、
スキー&ボードジャンプテストを行なう。
2/20午後
南斜面でスキー&ボードジャンプテスト、埋没体験、ビーコン練習。
2/21午前
地面まで雪を掘って断面観察
2/21午後
セルフレスキュー訓練。「11人パーティーで行動中、3人が雪崩に
巻き込まれる。2人は深さ1mに完全埋没、1人は半埋没(手袋が雪面に
見えている)、11人全員がビーコン、スコップ、ゾンデ棒を持っている。
雪崩の規模は幅30m弱(?)、長さ50m弱(?)」という設定。

【感想】
こういう講習会に参加している目的は、もちろん
(1)雪崩に巻き込まれる確率を減らす。
(2)万が一、雪崩に巻き込まれた場合に、助かる確率を上げる。
(3)でも美味しいパウダーを滑べりたい。
なんですが、まだまだ難しいですね。
#(3)がなければ簡単なんですが…^^;

(1)のために、弱層ハンドテストとか、弱層部分の雪の結晶を観察
したりして判断しているわけなんですが、どういうときは滑べっても
大丈夫で、どういうときはダメかの判断はとっても難しいです。
弱層が不安定だったら、あまり急な斜面に行かないとか、滑べるときや
トラヴァースのときはなるべくまとまらず、一人づつ動くとかは
してますが…。
どの程度の斜度のところまでなら大丈夫なのかは、自分の勘を信じるしか
ないですね。行くのをやめたら、「よかったよー」と言われて、
悔しい思いをすることも多いし。
#死ぬよりはいいんですが^^;

(2)もセルフレスキュー訓練を1/10と今回の2回やって、多少は慣れて
きたのですが、反省点や課題がいくつかありました。
・捜索時にもっと冷静になる。
 -> (半)埋没者の雪面に出ている手袋に、全く気が付かなかった。
 -> リーダーや見張りの指示をちゃんと聞けていなかった。
・色々な状況を設定して、セルフレスキューの訓練をしてみる。
 -> 今回想定した11人パーティーで行動することは普段ない。
 -> 緩斜面でしか、捜索訓練をしていないので、急斜面でもやる。
・ 救急法をもう少し身につける。
 -> 去年日赤の1日(6h)講習と2h講習に1度づつ出たが、まだスムーズに
    動けない。
・ セルフレスキューにおける捜索リーダーをやってみる。
 -> 今回はくじ引きで負けてできなかった

【この講習会での成果】
(1)積雪の大分類(新雪・しまり雪・しもざらめ雪・ざらめ雪)が、
  なんとなくわかりかけてきた。
(2)セルフレスキューの「訓練」の仕方がこれもなんとなくですが
  わかった。
成果はあったけど、まだまだ修行が必要だということでしょう。

----------------------------------------------------------
講習の詳しい中身について。

【弱層ハンドテストと雪の結晶観察の結果】
(等幅フォントで見てください)
弱層の位置  表面から5cm、30cm、  55cm、  60cm
弱層の強さ         手首、  肘、    肩、    肩、
弱層部分の結晶 広幅六花、同左、表面霜、判らず

【積雪の種類】
表面から 47cmまで       新雪
47cmから 49cmまで       ざらめ雪(固くて、黄砂も混じっていました)
49cmから120cmくらいまで しまり雪(こしまり?)
120cmから190cm(地面)までざらめ雪にしもざらめ雪が混じりでした。
(70cmより上は土曜日の観察結果、それより下は日曜日)

この結果からの私の危険度判断は、「斜度の急な沢には入らない」
「急斜面に入る前にもう一度弱層チェック」「滑べるとしたら
一人づつ間隔をあけて」かな? 
深さ47cmまで新雪なので、底付きもせずに楽しく滑べれたのでは
ないでしょうか。
#ニセコよかったんだろうなー;_;
#中山峠は斜度がないので林の中では止まってしまいました。

【ジャンプテストの結果】
午前中テストした場所では、屈伸したら30cmのところで、1回
ジャンプしたらと55cmと60cmの弱層のところで、割れました
(スキーでもボードでも)。
午後にテストした南斜面では、1回のジャンプで30cmのところが
崩れたのですが、その後何度ジャンプしてもそれ以上は
崩れませんでした。
どちらも斜度のあまりないところでやったので、あまり実践的では
ないのですが。
#でも急なところでやると危なそう。

【ビーコン練習】
2つ埋め、1つ見つけてもビーコンのスイッチを切らずにもう1つを探すと
いうのを、やりました。
#これは実際の捜索では、「ビーコン担当とゾンデ棒、スコップ担当に
#分かれる。ビーコンとゾンデで埋没者を1人見つけたら、掘り出すのは
#スコップ担当の人に任せ、ビーコン担当者は次の人を探す。」と
#いうのが効率が良いからということだと思います。
「2つ埋まっているときは、音の鳴り方が違う」ということでしたが、
他の人のビーコンも鳴っているので聞き分けるのが難しかったです。
やっぱりイヤホンが必要ですね。2つのビーコンが離れていれば、
1つ見つけたら一度その場を離れて探すのが有効でしたが、2つがすぐ
近くに有る場合は、対応できませんでした。

【セルフレスキュー訓練】
11人パーティー中、3人が雪崩に流され埋まってしまった(前もって
実際に人を埋めておいた)ので、残り8人の中からリーダーを選び、
ビーコン担当3人、ゾンデ棒&スコップ担当3人、見張り(2次雪崩に
備える)1人という構成で捜索しました(今回はあらかじめ担当を
決めていた。私はビーコン担当)。

1/10(日)補修実習でやった捜索練習と我々の前にやった班の訓練を
見ていて感じたのが、
(1) リーダーの力量によって捜索の効率が全然違う。
(2) ビーコンは担当区域を決めた方がよい。
(3) 遺留物の下には人が埋まっていることがあるので、注意する。
    (なんで半埋没の人を見つけられないんだ馬鹿め!)
(4) ビーコンで最小レンジまで絞れたら、すぐゾンデ担当を呼んで
    突いてもらう。
 -> 前回は3つランプが付くことに拘って、発見が遅れてしまった。

だったので、「リーダーに、指示して欲しいことをあらかじめ説明して
おく。ビーコンは雪崩の跡にそって右、真ん中、左に別れて斜面を下って
行く。(3)、(4)についてはパーティーの全員に徹底する」などの準備を
しておきました。

で、結果ですが時間を正確に覚えていないのですが(<- いけない
ですね)、以下のような経過でした。

・雪崩発生
リーダーのもとに集合し、リーダーが役割分担を決める。
ビーコン担当はスキーを外してすぐに探し始める。
下だりながら、雪崩の範囲や、遺留物を旗でマーキング。

・雪崩開始後、3分
2箇所(私ともうひとりのところ)でビーコンで最小レンジになる。
ゾンデ担当を呼ぶ(まだ準備が出来ていなかった)。

・雪崩開始後、4分
ゾンデで人を確認、スコップで掘り始める。
あと1人が見つからないので、ビーコン隊はうろうろする。

・雪崩開始後、?分
2次雪崩発生(という想定になっていた)。
私だけ違う方に逃げた。遭難したかも;_;

2次雪崩がたいしたことなかったので、捜索再開。スコップ隊が
片方の箇所で2人が埋まっていることを確認したので、ビーコン隊も
スコップを出し、掘る。1人は意識がなかったので、みんなで
穴からそっと持ち上げ、ツェルトにくるみ、安全なところへ。

ここまで10分くらいでしょうか。
全体的には、短時間で救助できたのでよかったと思います。

【セルフレスキュー訓練の反省点】
私がビーコンで発見した人は、手袋が見えている半埋没の状態だった
らしいです。全然手袋に気が付きませんでした;_; しかもビーコンでの
捜索中に手袋に雪をかけて埋めていたらしいです。(<- まぬけ)
「遺留物に注意する」と言っていたのに…。
他の人も遺留物には、あまり注意を払っていなかったようです
(講評で指摘された)。
ほかにもリーダーの指示をちゃんと聞いていなかったり(やることが
わかっていたので、いいやと思っていた?)、2次雪崩のときに
見張りの人の指示を正確に来ていなかったり、反省点は多いです。
せめてあと数回は訓練しないとダメですね。

【最後に】
「なるべく」安全に、「なるべく」楽しいところを滑べるためには
まだまだ精進が必要です。はい。
back))
hey-chan
E-mail:nadare@hey.org